HBS 積分時間と必要フレーム数 簡易見積 り 平成11年10月19日書、平成11年11月07日改定


以下に紹介するのは、 F-G型星の観測において、 SITe CCDをゲイン8×1(g=0.598ADU/e-)にて用いる場合 の、積分時間およびフレーム数の見積りの例である。 TI CCDをゲイン1×8で用いていた場合(平成11年度)と比較すると、 チップの量子効率が向上していること及びピクセルサイズ が異なることから、明天体の観測においては積分時間を数分の1程度に短く しなくてはならない。また、結果的な1フレームあたりの光子数は少なくなる ので、同じS/Nを得るために必要なフレーム数は増加する ので注意が必要である。 大雑把にいって、SITe CCD を用いた明天体の 観測においては、TI CCD での観測と比較して、積分時間を約4分の1にして 総フレーム数を2倍にすれば、5000-7000Å付近でほぼ同じS/Nが得られる (近紫外領域ではそれ以上のS/Nが得られる)ものと考えて良い。 なお、以下に挙げるものはあくまでも一例であり、実際の観測パラメータは 観測時のシーイングやエアマスなどの状況で大きく変動するものであることを あらかじめ御理解頂きたい。

1、明るい天体の場合 (V ≦ 7 mag)

明るい天体の場合には、1フレームごとに、CCD/ADCのリニアリティが保証さ れている範囲内でなるべく多くのカウントを稼ぐように積分時間を 設定した上で、数セット(1セットは4方位の波長板方位角でそれぞれ撮影した 4フレームからなる)の撮影をして、必要なS/Nを得る。 以下に、V(mag)のF-G型星の撮影において、 ピークカウントを2万ADU程度にするための積分時間と、 波長域4000-8000Åにわたってビンニング Δλ Åで観測する場合に 光子統計による偏光測定誤差をΔP %以内にするために必要な フレーム数の見積り例を載せる。 ここでは、1フレームあたりのカウントを充分に稼ぐことができるため、 必要な偏光測定誤差の算出には光子統計誤差の考慮のみで代表できるとした。

1フレームあたりの積分時間 = 20秒 × 2.5^( V - 5mag )
必要フレーム数 = 24フレーム(6セット) × ( 50Å / Δλ ) × ( 0.04% / ΔP )

2、暗い天体の場合 (8mag ≦ V ≦ 10mag)

HBSによる観測では、主としてシーイングの時間変動の影響を抑えるため、 1フレームあたりの積分時間を200秒程度より短くする方が望ましい。 このように積分時間に上限をつけた場合、暗い天体においては、 フレームごとのピーク・カウントが 少ない状態で観測を行なうことになる。そのため、星の光子統計誤差だけでなく 読み出し誤差やスカイ・ダークの統計誤差も考慮する必要がある。 以上の誤差要因をもとに詳細な見積りを行なうと、HBS整約マニュアル第3章 に一部紹介したような形になるが、観測天体が 8mag < V < 10mag の場合には、 経験的には光子統計誤差のみ考慮した場合の数倍の フレーム数を稼ぐと充分である場合が多い。 以下はVmagの天体を 波長域4000-8000Åにわたってビンニング Δλ Åで観測する場合に 偏光測定誤差をΔP %以内にするために必要なフレーム数の経験的な 一例である。
1フレームあたりの積分時間 = 200 秒
必要フレーム数 = 24フレーム(6セット) × 2.5^( V - 8mag )× ( 100Å / Δλ ) × ( 0.06% / ΔP )


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