2000年5月期CCD性能確認
May 24, 2000.
ドームフラット画像を用いて、gain(カウント値とその分散の関係より)、
linearity(積分時間に対するカウント値)、readout noise(複数bias frame
より)を測定しました。結果としては、以下のようになっておりますが、
昨年(http://optik2.mtk.nao.ac.jp/HBS/hbsccd.html)の結果と大きな
変化はありませんでした。
今回の解析は大雑把な確認程度のものなので、conversion factor等は
今後もこれまでの値を用いるのがよいと思います。

カウント-分散関係(gainの測定)

linearity
今年4月の東北大中山氏の報告と同じ方法で、CCDシャッターの開閉速度 を測定し、この報告と同程度速度であることを確認しました。 ただ、最近のシャッター不調でこの調査より悪化している可能性が あり、注意が必要です。

シャッター動作による照射時間の相違
今回、CCDカメラの温度表示が異常値を示しており、実際のCCD温度 見積りのためにDARK画像の熱電流量を求め、温度を逆算しました。 温度制御は行なわれていないものの、およそ-60°C程度には冷却 できているようです。
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2000.5-6 期
HBS観測(岡山91cm)における
CCD 熱電流について
2000.5.24 秋田谷 洋
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[1] はじめに
今期の観測初期、5/18ころからCCD(S5 Cryocam)制御ソフト上の
温度表示が、明らかにCCD温度を反映していない異常値(±60°Cの
間でばらばら)を示すようになった。
また、ソフト上のCCD冷却温度設定値によらず、常に最大出力で冷却が
続いているようである。
このような状況で観測するにあたり、
(1)CCD温度は実際どの程度か。また、熱電流量は観測に耐え得るほど小さいか
(2)外気温によってCCD温度が変化すると考えられるが、その変動の程度は
どの程度か
が問題となる。
観測期中に取得したいくつかのdark画像およびbias画像から、熱電流量の
実測値を求め、以前求めたCCD温度と熱電流量の関係式からCCD温度の概算値を
求めた。また、CCD温度変動による熱電流量の変動について、読みだし雑音との
比較から考察した。
[2] 観測中の熱電流量とCCD温度概算値
観測期中のdark画像、およびbias画像より、以下のように
熱電流量αdark [e-/sec/pixel]を求めた。
αdark = ( dark(数枚平均;画像中心部平均)- bias(数枚平均;画像中心部平均))
/ exposure time * conversion_factor
conversion factor = 1.67 e-/ADU
また、以前の実験(*1)より、以下の関係式を用いてCCD温度 Tを概算した。
T = -70.0+17.5 log(αdark / 0.064)
αdark T TEC
[e-/s/pix] [°C] [°C]
5/18 17:40 0.20 -61
5/18 19:40 0.074 -69 37
5/22 19:30 0.34 -57 37 dome内22.3°C
真空引き(2 hours)
5/23 23:30 0.061 -70 38
5/24 2:10 0.057 -71 37
これらより、本観測期ではCCD温度はおよそ-55〜-70°Cの範囲にある
ようである。
(*1) HBS用CCDカメラCRYOCAM-2の性能テスト(2) (秋田谷、中山 1999)
ftp://ftp.astr.tohoku.ac.jp/users/akitaya/cryocam2/cryocam199906ts.ps.gz
[3] 熱電流量と読みだし雑音の比較
読みだし雑音σro(=6.4 e-)と熱電流に起因する雑音σdark(=√(αdark・t))
の比は、
σdark/σro = √(αdark・t)/ σro
とかける。逆に、この比が1となる積分時間 tは、
t = σro^2 / αdark
となる。これを図1に示す。併せて、主なCCD温度を示した。
CCD温度-60°C 以下では、t < 〜200 secで σdark/σro < 1 で
あるため、読みだし雑音が優勢で、熱電流による雑音やCCD温度変化によるその
変動はそれほど大きな影響をもたない。
CCD温度が-60°Cより大きくなると、短時間積分の際にも熱雑音が効いてくる。
[4] 観測時の注意
充分な真空引きがなされていれば、多くの場合、CCD温度は-60°C台まで
低下しているようである。この場合、長時間積分(> 200sec)でない限り、
熱電流は気にならない程度である。
しかし、外気温や排気の状況によってはCCD温度が変化するようなので、
時々100秒程度のdark画像数枚とその前後のbias画像を取得し、αdarkを
求め、熱雑音量と熱雑音の影響が生じる積分時間、および、CCD温度推定値を
確認するのが良いだろう。

読みだしノイズと熱雑音が等価になる積分時間見積もり。
注)上記異常は、2000.7の修理で改善されました(2000.7.27)
秋田谷 洋
(akitaya@astr.tohoku.ac.jp)