線スペクトル偏光分光装置 CCD開発・製作報告

* 第2回試験観測における装置効率

Nov. 4, 2001.


* 概要

線スペクトル偏光分光装置第2回試験観測(2001.10三鷹赤外シミュレータ)における、 長波長用回折格子とEEV CCDカメラの組合せによる装置効率(望遠鏡込み)を測定した。
効率は、最良の波長域で、少なくとも約1%、 大気吸収の不定性を考慮すると 約2-5%程度と見積もられる。

* 効率測定

第2回試験観測期中、測光標準星αLyrのスペクトルを取得した。
観測諸元は次表のとおり。

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        日時  2001.10.25 〜21:00 JST
        天体  α Lyr
    スリット  大穴
   クロス     300 /mm  
ディスパーザ  7500Å blaze
    瞳絞り径  〜8mm 
    積分時間  30 sec
        天気  hazy 天体付近に雲
        高度  30.8°
      方位角  118°
         I.R  66.9°
  取得波長域  5700Å(m=34) - 8400Å(m=23)
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   (表1)観測諸元
  
Hazyかつ天体は低空で付近に雲があり、1-2 mag程度の大気減光が あったと思われる。
画像は3枚取得したが、その間の光量は約2%程度の範囲で安定していた。

上記取得スペクトルの各次数について、秋田谷(2001) 『第1回試験観測期における装置 効率に関して』と同様の方法で効率の波長依存性を求めた。
なお、今回は、瞳径を本来の13mmから8mmに絞った効果を、望遠鏡有効径が 絞られた(望遠鏡直径 D= 150 cm * (8mm/13mm) )として含めている。 大気吸収は補正していない。

*
(図1)効率測定に用いたα Lyr画像。
左端がm=23、右端(常光、異常光ともに切れていないもの)がm=34。
画面左の長波長域では、各次スペクトル間にゴーストスペクトルが見える。


* 装置効率

m=23〜34の各次数スペクトルにおける装置効率を(図2,3)に示した。
横軸は各次数スペクトルのピクセルスケール、縦軸はその位置での効率である。
また、各次数ごとの最良効率を(図4)に示した。

各次数内では、スペクトル中心付近に効率のピークを持ち、 free spectral range両端に向かい、効率がピークの20-30%に減少している。

異なる次数間では、29次(〜6700Å)に効率のピークを持ち、両端に向かって ほぼ単調減少を示す。特に長波長側への減少が顕著なのは、長波長側への CCDチップの 感度減少が顕著であるためであろう。

*
(図2) m=23-29の各次数における装置効率。(瞳絞りの補正含む。大気吸収補正なし)

*
(図3) m=29-34の各次数における装置効率。(瞳絞りの補正含む。大気吸収補正なし)

*
(図4) 各次数の効率のピーク。

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   m      λcenter[Å]
 ----------------------
   23        8436
   24        8084
   25        7761
   26        7462
   27        7186
   28        6929
   29        6690
   30        6468
   31        6259
   32        6063
   33        5880
   34        5706
 ----------------------   
 (表1) 各次数の中心波長。
λcenter = 1/N * 2sin(β)/cos(γ) / m N = 72 /mm、β=44°、γ=6° を使用


* 考察と第1回試験観測との比較

最も効率の良い30次スペクトルの中心で、効率は約1%である。
大気吸収が1-2magあったと考えると、装置効率は2-5%程度と見積もられる。

一方、第1回試験観測では、大気吸収、スリットでの減光、瞳絞りの効果 を含めて、30次のスペクトルピークで約0.2%という測定結果を得ている。
また、レンズ系交換による瞳絞り開放、CCD素子交換、長波長用クロスディスパーザ導入により約8.5倍の効率改善が期待できることを示した。

とすると、前回の効率値を元に、今回の観測期に期待される効率は
0.2 x 8.5 / 0.5 = 3.4 %
であるが、それに比べて今回の30次のスペクトル中心での効率測定値は 0.95%と小さい。
大気吸収量の不定性、スリット減光量の不定性を考えると、 factor 2-3の不一致は避けられず、前回の測定置と今回の測定値の比較から 素子の更新による効率の改善を論じるのは難しい。
より厳密な効率の測定には、測光夜に天頂付近の測光標準星を観測 することが必要である。

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post 秋田谷 洋 (akitaya@astr.tohoku.ac.jp)