UH88望遠鏡イメージクオリティの確認

(2001年9月28日)






2001年9月のUH訪問では、f31モードにおいて我々の装置の焦点面が
望遠鏡バックフォーカスの可変範囲に収まることを確認した。
とはいうものの、デフォルトの焦点面位置からは200mm程度も望遠鏡
から離れた位置にあるため、収差によるスポットの歪みの程度が
気になる。そこで、今回UH88マニュアルをもとに望遠鏡光学系を
再現し、副鏡移動に伴った焦点面移動によるスポット形状とサイズの
変化を調べた。

望遠鏡の光学パラメータは、UH88マニュアルを参照した。
デフォルトでのバックフォーカスの距離もしくは、副鏡と主鏡の距離
が記載されていなかったので、合成焦点距離(68.78m)からそれらの
値を導出した。ここで仮定された光学パラメータを以下に示す。

  surf.NO    radius(mm)   conic  thickness(mm)     glass           comment 
  1           -12344.5  -1.0535    -5583.4932     mirror    primary-mirror
  2            -1293.6  -2.1730     5583.4932     mirror    secondary-mirror   
  3                inf   0.0000      977.5456               back-focus

このときのスポットダイアグラムは以下のようになった。
各スポットダイアグラムは、視野(視野中心、スリット端、スリットビュア端)
の違いを表している。スポットを囲む円は0.2 arcsecに相当する。
デフォルト位置においても、コマ収差が残っているのが見受けられる。
しかしながら、シーイングサイズ0.5 arcsecよりも十分小さく問題にならない。
スリットビュア端では、コマ収差がかなり大きい。

 デフォルト焦点面でのスポットダイアグラム  
次に、焦点面をデフォルト位置から100mm、200mm、300mmずらした場合の、 最良スポットダイアグラムを示す。フォーカシングは副鏡を前後させる ことのみによって行っている。焦点面がデフォルト位置から離れていくに したがって、スポットサイズが大きくなるのがわかる。200mmまでならば スリット内においては0.2"に収まるが、300mmになるとシーイングサイズと 同程度にまで広がる。この場合シーイングの良い条件では、問題になる。 δd=100mmでのスポットダイアグラム
δd=200mmでのスポットダイアグラム
δd=300mmでのスポットダイアグラム
結論: 我々の装置の焦点面での最良スポットサイズは0.2 arcsec程度であり、 典型的なシーイングサイズ(0.5 arcsec)より小さい。シーイングが特に よい場合は(特ににコマ収差が)気になるが、大抵の場合シーイング リミティッドだと言ってよい。 ただ、今回は鏡の面形状を完全な双曲面としている。RC型の曲面は 一般には、展開式で表現するので高次の項を無視している分、実際の 双曲面とは若干のずれがある。今回の見積もりをより信頼のおけるもの にするには、そのずれ量も考慮しなければならず、鏡を磨いた際に 何次項までを考慮したかをUH側に確認する必要がある。また、 デフォルトでのミラー間隔の正確な距離も可能であれば手にいれて、 併せて再度確認をしたい。