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4.1 「光量-シグナル値関係」「シグナル値分散-シグナル値関係」の使い分け

この報告では、カメラシステムの線形性を調査するために、
(1)安定光源光を照射して得られた「光量-シグナル値」の関係
(2)SLPT法に基づく「シグナル値分散-シグナル値」の関係
の、2つの方法を用いて線形性について調査した。

(1)安定光源光を照射して得られた「光量-シグナル値」の関係からは、 測定値から、直接に系の線形性を示す量、$LRs$が導かれるため、 線形性に関して信頼性の高い情報が得られた。
実験のためにはシャッターを含む複雑な光学系を組む必要があり、 光源の安定性や積分時間の制御に注意を要する。 また、相応の積分時間と画像取得枚数を要するため、長時間の実験となる。

一方、(2)SLPT法に基づく「シグナル値分散-シグナル値」の関係からは、 測定値をもとに、系のゲイン値、および$LRs$を推定することができるが、 得られた結果には、真の値との間に時に無視できない程度の系統的な誤差が含まれ、 この方法から独立に正確な$LRs$を得ることは困難であることが分かった。 また、測定量$k_{\rm nc}$は、真のゲイン値の関数形$k$に大変敏感である。
実験は、カメラとLED光源のみの簡単な構成で、しかも積分時間を全く 要しない少数の画像でデータが得られるため、容易かつ短時間に終了することが できる。

以上を踏まえて、それぞれの手法は以下のように使い分けるのが良いと考えられ る。

線形性の正確な調査:
「光量 - シグナル値関係」
$\;$
線形性について、不定性を排除して直接的で信頼度の 高い情報を得る。十分なシグナル値分解能と測光精度 となるように留意する。 光量の安定性や積分時間制御には細心の注意を要する。

カメラ設定変更による線形性の微調整:
「分散 - シグナル値関係」
$\;$
求まるのは$k_{\rm nc}$で、真のゲイン値$k$$LRs$ではないが、 $k_{\rm nc}$$k$に非常に敏感で、かつ、真の$k$が良好(シグナ ル値依存性が小さい)であれば、$k_{\rm nc}$も同様に素姓の良い 振る舞いを示すと考られる。設定の変更ごとの、特性の相対的な 比較には十分。また、カメラ単独の簡単な光学系にて短時間で情報 を得る必要があるため、「光量 - シグナル値関係」に基づく測定 は現実的ではない。

カメラの安定性:
「分散 - シグナル値関係」
$\;$
$k_{\rm nc}$を測定して、過去の結果と比較する。 $k_{\rm nc}$$k$に非常に敏感であるため、$k_{\rm nc}$に大き な変化が見られなければ、即ち、線形性特性も安定し ていると見做してよい。 過去の測定に比べて無視できない程度の相違が現れた ら、設定ミスがないことを確認の上、線形性が変動し たと判断して、再度「光量 - シグナル値関係」に基づく 詳細な線形性の調査が必要である。


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Hiroshi AKITAYA 平成15年11月20日