線スペクトル偏光分光装置 CCD開発・製作報告

* 吸着材の使用によるアウトガス抑制と素子冷却の実現

July 10, 2000.

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2000.7

これまで、デュワー内において1E-5 Torr/s 程度のアウトガスがあり、 真空引きを停止すると数分程度で気体の熱伝導による熱流入が 無視できなくなる程度(1e-3 Torr)まで内部圧力が上昇していた。 そのため、真空引きを停止すると素子冷却が実現できなかった。

アウトガスによるデュワー内の圧力上昇を抑えるためには、ベーキングや内壁表面処理 など、アウトガス源そのものをなくす方法と、真空ポンプや吸着効果を利用して 放出気体を除去する方法が考えられる。ここでは、後者の立場をとり、モレキュ ラーシーブスを冷凍器ヘッド付近に大量に設置しかつ低温に維持し、吸着効果に より放出気体をを吸着することで、内部圧力上昇を抑制する方法を試みた。

吸着材をこれまでよりも大量に封入できる銅製の吸着材ケースを自作し、コール ドヘッドにじかづけし、冷却した(最大90K程度まで冷却可能)。 これにより、従来の常温での内部圧力上昇 1E-5 Torr/sを、1e-11 - 1e-10 Torr/s 程度まで抑えることができた。この程度の圧力上昇では、気体熱伝導が効きはじ める圧力a few x 1e-4 Torrに上昇するまで少なくとも1週間以上要するため、 1週間程度の観測期間中はデュワー内の圧力は充分低圧に保たれ、目標温度(150-170K)での 素子冷却を維持することができるだろう。

詳細は、以下のレポート参照(ps file)

吸着材ケース写真1
吸着材を冷凍器ヘッドにじかづけするために銅製の吸着材ケースを自作。 そのケース(写真左上)をデュワーに取り付けたところ。 溝を削りすぎたりタップを折ってしまったりと、雑な作りになってしまった。 吸着材を固定する網も、当初はねじどめするはずが、テープでの固定に。
吸着材ケース写真2
別な角度から
冷却成功1
真空引き停止後も1e-6 Torr台を維持。冷却は継続中。
冷却成功2
圧力上昇グラフ
吸着材ケース使用前後のデュワー内の圧力上昇の相違。(赤)吸着材ケース使用前・常温(5月の実験より)、 (緑)吸着材ケース使用時(CLKAMPなし)・ケース冷却、(青)吸着材 ケース使用時(CLKAMPあり)・ケース冷却。
吸着材ケースの使用で、内部圧力上昇率が激減した。CLKAMPをデュワー内に入 れると、入れな い場合よりも圧力上昇がかなり大きくなるが、それでも一週間程度素子冷却可 能な真空度を保つには問題にならない程度。

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post 秋田谷 洋 (akitaya@astr.tohoku.ac.jp)