線スペクトル偏光分光装置 CCD開発・製作報告
CCD chip未接続状態でのノイズ対策
August 6, 2001.
実験
CCDチップを接続せず、SIGADCへの信号入力、もしくは、CLKAMPへの
CCD信号入力それぞれに10kΩ抵抗接続(および短絡)した状態での
画像読みだしを行った。
VMEラックの交換、ケーブルのシールドなどノイズ対策に有効と
思われる操作を行いつつ画像を取得し、画像内のカウントの
標準偏差(=ノイズ)を測定した。
VMEラックは、我々のグループで購入して使用している「LIPS用(Schroff)」と
市川氏のグループが所有している「東北大CCD用(中央電子)」の間で比較した。
結果
一連のノイズ対策(次節で列挙)の前後でのノイズ値は次表の通り。
-----------------------------------------------------------------------
ノイズ (画像内標準偏差[ADU])
SIGADC入力 CLKAMP入力
VID±間 COUT±間
VMEラック ノイズ対策 10kΩ short 10kΩ
-----------------------------------------------------------------------
LIPS用 前 9.862 103.1 128.3
(Schroff11009-043) 後 10.63 100.3 112.8
東北大CCD用 前 16.13 65.95 131.9
(中央電子EUPS-30A) 後 6.95 - 67.7
-----------------------------------------------------------------------
ノイズ対策の後では、LIPS用VMEラック使用時に対して、東北大CCD用VMEラック使用
時のノイズが約6割と低くなっている。有意にVMEラックもしくはその電源の相違
によるノイズの相違があることが分かった。
CLKAMP入力に10kΩ抵抗接続時の値を比較すると、前回求めたgain〜6を用いて、
LIPS用VMEラックで約21e-、東北大CCD用VMEラックで約11e-相当のノイズが載ってい
ることになる。
東北大CCD用のVMEラックの場合、一連のノイズ対策の結果、128.3ADUから67.7ADUま
でかなりのノイズ減少に成功した。一方、LIPS用VMEラックでは、その対策の効
果が現れていない。(なぜか?)
SIGADC入力とCLKAMP入力間で丁度10倍程度のノイズの相違があるのは、
両入力に同程度のノイズが載っており、CLKAMP入力に入ったノイズは、
gain〜10に設定されている増幅回路で10倍に強められているのであろう。
混入するノイズは以下に示すように両VMEラックともに極めて周期的なパターン
である。
ともに周期は約60ADUである。CCD読みだし速度(serial shift)が、9.6
μs/pixelであるので、ノイズ周期は0.58ms(1.7kHz)となる。とくに商用電源の
50Hzとの一致は見られなかった。
オシロでCLKAMP入力に接続した抵抗間のシグナルを見ると、CCD Clock駆動中、
明らかに大きくかつ周期的な信号が生じていた。
LIPS用VMEラック使用時のノイズ。
振幅には異なるlineにわたって、なめらかで連続的な変動が見られる。
程度は2倍以下。
LIPS用VMEラック使用時のノイズ。(x:1-1000の拡大図)
東北大CCD用VMEラック使用時のノイズ。
東北大CCD用VMEラック使用時のノイズ。(x:1-1000の拡大図)
ノイズ対策
今回、主に以下ようなのノイズ対策を実施した。
ノイズ減への効果の程度ごとに項目を分類した。
VMEラック電源コンセントの変更でノイズに大きな相違がみられたのは、
VMEラックのノイズへの寄与の程度が大きいことを示しているようだ。
■ はっきりとしたノイズ減少がみられた項目 ([]内は実用上難がある対策)
- BIAS-CLKAMP間のケーブルのシールドをGNDと接続(-40ADU)
- [ CLKAMPをdewarから外す(-40ADU) ]
- [ CLKAMPを銅箔で軽く覆う(-2〜16ADU) ]
- VMEラック電源の交流100Vコンセントを変更(-12〜-18 ADU)
-
■ 若干のノイズ減少がみられた項目
- BIAS-CLKAMP間のケーブルの銅箔シールド(-4ADU)
- CCD直前のmicro D-subコネクタ(15pin)をGNDと接続 (-3 ADU)
- M-Front用入力電源ケーブルを銅箔シールドで覆う (-2.5 ADU)
- CLKAMO用ハーメチックコネクタ全体をアルミ箔でシールド (-1 ADU)
- M-Frontの3UラックフレームをGNDと結線 (-1 ADU)
■ 有意なノイズ減少が見られなかった項目
- Messia-M-FrontのGND接続 (+2 ADU)
- ADC冷却ファンを取り除く (+3 ADU)
- 温度センサー他用のハーメチックコネクタを外す (-2 ADU)
- CLKAMPのFPCフラットケーブルをアルミ箔で覆う
- M-Front電源の交流100Vコンセントを変更
- M-Front用入力電源ケーブルの銅箔シールドをGNDと結線
- VMEラック交流100Vケーブルのアース線をコンセントのアースと接続しない。
- VMEラックフレームをGNDと結線
ノイズの明らかな増加が見られた項目
- FPCアダプタをCCD用コネクタ・配線のない実験用のものに変える (+60ADU)
ノイズ対策実験1。LIPS用VMEラック(左)と東北大CCD用VMEラック(右)。
ノイズ対策実験2。CLKAMP-BIAS間のケーブルは新たに作り直した。
前回丸一日かかった作業が、今回は半日で済んだ。若干の上達?
まとめと今後の対策
- ノイズ対策などの結果、
適当なVMEラックがあれば、
少なくとも、CCD未接続の状態で10e-程度のノイズレベルまでは実現できることが分かった。
- さまざまなコンセントにVMEラックを接続してみる。可能であれば
さらに他のVMEラックを試す。
- VMEラック(もしくは電源)の相違だけでノイズが大きく変化する。
低ノイズのVMEラックの情報を得て、試用する。
- CCD chipを繋いで実際画像を読み込みを行ってのノイズ対策を行う。
(冷凍機絶縁など=現在実験進行中)
- クロックパターンの相違によるノイズ変化の調査を行う。(ADC速度の変更、積分
器での積分時間変更など)
秋田谷 洋
(akitaya@astr.tohoku.ac.jp)