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2.4.2 光量の変動とその補正

実験の間のXe光源の安定性を確認するため、約10分に1枚の割合で20秒積分のXe光源画像を取得した。

これらの20秒Xe光画像について、実験経過時間に対する 画像内の同一の領域におけるシグナル値の変化を見たところ、 経過時間に対して一次関数的な変化を示した(図23)。 また、選択領域によって、時間に対するシグナル値変化率は一定ではなかった。 画像内の位置による、変化率の分布傾向を調査したが、特に傾向はみられなかった。

光源そのものの光量が変化する場合は、画像内の場所によらず一定のシグナル値 変化率が見られるはずである。また、光源の温度変動により、光源のスペクトル 形状が変化した場合は、シグナル値変化率が場所により変化し得るが、 波長方向に対する系統的な傾向が見られるはずである。

これらのどちらとも一致しなかったことから、ここで見られたシグナル値の時間変化は、 単純に光源そのものの光量や温度の変動ではなく、 光源の固定が不十分で徐々に光源の位置がずれることなどにより、 スペクトル像の形状が変化したことに起因すると考えられる。

単一の領域内では、シグナル値の時間変化はゆるやかで系統的であるため、 各領域について、20秒Xe画像で得られたシグナル値から、照射光量の変化を 一次関数にてフィッティングし、補正することとした。

ある領域において、測定時刻$t_{\rm obs}$のシグナル値が $S(t_{\rm obs})$で あったとする。このとき得られる量、


\begin{displaymath}
\Delta (t) = 100 \cdot \frac{S(t_{\rm obs})-S(0)}{S(0)}
\end{displaymath} (1)

(時間原点$t_{\rm obs}=0$として、1枚目の20秒Xe画像取得時をとった。 $S(0)$は、1枚目のXe画像で得られたシグナル値。) に対して、
\begin{displaymath}
\Delta_{\rm fit}(t_{\rm obs}) = a t_{\rm obs} + b
\end{displaymath} (2)

の一次関数をフィッティングし、$a$$b$の各定数を得る。 この関数が、いま用いている領域における光量変動を示す。

次に、 各積分時間で得たXe光源に対して、 時刻原点$t_{\rm obs}=0$を基準に、光量の補正を行う。

積分時間 $t_{\rm exp (obs)}$で画像を取得し、そのとき $S_{\rm ADU}$のシグナル値が得られたとする。 また、測定時刻が$t_{\rm obs}$だったとする。 この時、ここで得られたシグナル値は、仮に照射光量が時刻$t_{\rm obs}=0$に おける値だったとすれば、

\begin{displaymath}
t_{\rm exp} = t_{\rm exp (obs)} \times ( 1+ \frac{a t_{\rm obs} +b}{100} )
\end{displaymath} (3)

の積分時間を要した場合のシグナル値と見做すことができる。 即ち、この画像で得たシグナル値は、積分時間 $t_{\rm exp (obs)}$に対する値で はなく、ここで得た新たな積分時間$t_{\rm exp}$で得たものとする。 これにより、照射光量変動の補正を施したことになる。

照射光量変動を補正後、本来補正が完全であれば一致すべき8枚の20秒積分Xe画像のシグナル値のばらつきは、 peak-to-peakで0.4%( $> 1000$ ADUの領域)-0.6% ($< 1000$ ADUの領域)程度であった。よって、照射光量変動を補正した上での シグナル値測定精度は、およそ $\pm 0.2 - 0.3\%$程度であると考えられる。

図 2: 実験経過時間に対する20秒 Xe光源画像内の各領域のシグナル値変化。 横軸は1枚目のXe画像取得時からの経過時間 [min]。縦軸は、1枚目のXe画像で得 られたシグナル値$S(0)$に対する、シグナル値差分 $\Delta S= S(t)-S(0)$の 割合( $\Delta = 100 \times \Delta S / S $ ) [%]。 それぞれの領域は、2.4.1節で述べた方法に従って選んだ。 直線は、そのうちの一つ(region09)に一次関数フィッティングを施した例。
図 3: 20秒 Xe光源画像の、画像内、数ピクセル$\times $数ピクセルの 狭い領域のシグナル値変化。領域は$y=1500$のライン上で、$x$座標の値を変えて 12箇所選択した。各領域のおよそのシグナル値 $S$ [ADU]もあわせて示した。
\includegraphics[scale=0.8]{rep_timevar1.eps} \includegraphics[scale=0.8]{rep_timevar2.eps}


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Hiroshi AKITAYA 平成15年11月20日