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3.3.2 数値解 $k(S_{\rm ADU})$に基づく線形性の評価

得られた $k(S_{\rm ADU})$を図12に示す。 境界条件 $k_0=k( 19000\;{\rm ADU})$のわずかな相違により、 $k(S_{\rm ADU})$の分布が大きく変化している。 いずれも、測定による $k_{\rm nc}(S_{\rm ADU})$の分布とは、 特にa few $\times 1000\; {\rm ADU}$以下の低カウント域で、 値、形状ともに大きく異なっており、 明らかに、このシグナル値域では、 $k_{\rm nc}(S_{\rm ADU})$を直接に $k(S_{\rm ADU})$と 見做すことができなくなっていることが分かる。

また、式(14)により Linearity Residuals $LRs(S_{\rm ADU})$ を求め、「光量-シグナル値」の関係から得られた結果と比較した(図 13)。

せいぜい$\pm 1\%$の境界条件値の相違により、 シグナル値が小さくなるにしたがって$LRs$の相違が増大し、 a few $\times 100\;{\rm ADU}$以下では、相違が5-6%まで達する。 その中で、 $k_0=0.4575, 0.4600$とした場合の解は、$LRs$$\pm 1\%$の範囲にお さまっており、「光量-シグナル値」の関係から得た線形性の特性におよそ 一致している。

真のゲイン値分布$k$、 および、Linearity Rresiduals $LRs$は、 境界条件$k_0$の値に非常に敏感であることが分かったが、 $k_0$の高精度の決定は大変困難である。 これは測定量$k_{\rm nc}$$k$と間に、常に不一致の可能性があるためである。 例えば、 真の$k$のシグナル値依存性に、$2^{16}$ ADUあたり 1% のわずかな傾きが あっただけで、$k_{\rm nc}$$k$の相違は、19000 ADU付近で約 0.6%に達する。 すなわち、境界条件$k_0$を与えるさいにも、同程度の不定性が含まれることに なる。

また、数値計算の際に与えた $k_{\rm nc}(S_{\rm ADU})$の関数形も、単純な一次関数で 近似したものである。よって、ここで行ったような非線型微分方程式の解において、 わずかな近似の誤差が、解に大きな誤差を生む可能性がある。


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Hiroshi AKITAYA 平成15年11月20日