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3.3.4 発展:数値解を用いて高精度の真のゲイン値を得る可能性

システムの真のゲイン値$k$は、線形性を知るためのみならず、 単に、系の 電子数 - ADU値変換係数 としても重要なパラメータである。 しかし、「シグナル値分散-シグナル値関係」から$k=k_{\rm nc}$として導出を試みると、 常に式(26)に見られるように、 $\epsilon (S_{\rm ADU})$の不定性 が含まれることになる。 ここでの不定性はせいぜい a few %の程度と考えられ、 それを越えた高い精度でゲイン値$k$を知る必要がある機会は必ずしも多いとは 言えない。

しかし、その不定性を排除して高い精度でゲイン値を知りたい場合には、 「分散-シグナル値関係」と「光量-シグナル値関係」をともに用いて、 数値積分法を組み合わせることで、実現できる可能性があることを以下で議論する。

例えば、我々の得た$k$の分布から求めた$LRs$について考える。 $LRs$は、境界条件$k_0$の値によって、大きく変化した。 しかし、その内の一つ、0.460を与えた場合の結果は、シグナル値のほぼ全域に渡って 平坦で$\pm 1\%$の範囲に収まり、Xe光源照射画像をもとに2節で 得た$LRs$とも矛盾しなかった。 ここで与えた$k_0$は、 $k=k_{\rm nc}$として得た 0.455より、約1% 大きい。 このとき、$k_0$として正しい境界条件を与えたために、得られた$LRs$も正しい結果が 得られたと判断して、$k_0$によって、 $\epsilon (S_{\rm ADU})$の不定性を排除 した真のゲイン値$k$が求まった、と考えることができる。

もし、我々が $k_{\rm nc}(S_{\rm ADU})$の関数形を誤差無く知ることができ、 かつ、「光量-シグナル値関係」により、線形性を示す関数 $LRs(S_{\rm ADU})$が 独立に得られている場合、以下のような方法によって、 真のゲイン値$k$について、 $\epsilon (S_{\rm ADU})$の不定性を含んだ不定値、 $k_{\rm nc}$としてではなく、より高い精度で決定することができるだろう。

  1. 「光量-シグナル値関係」により、 あらかじめ信頼性の高い$LRs$の分布を求める。
  2. SLPT法に基づく「シグナル値分散-シグナル値関係」より、$k_{\rm nc}$ の分布を得る。
  3. $k_{\rm nc}$を式(30)の微分方程式に適用し、 境界条件$k_0$をフリーパラメータにして、様々な$k_0$に対する $k$分布、および$LRs$分布を、数値的に解く。
  4. 「光量-シグナル値関係」のLRsと最も一致する$k_0$の値を、真のゲイン値と して採用する。$k_0$の決定精度は、フリーパラメータ$k_0$を振る際の刻 み幅の程度となるだろう。

この手法を実際に使用するには、「光量-シグナル値関係」による$LRs$や 「分散-シグナル値関係」による$k_{\rm nc}$について、十分な精度、か つ十分細かいシグナル値分解能で知らなけらばならないだろう。 その必要な精度の程度とそのとき結果として得られるゲイン値、$k$の精度の関 係などについては、さらに議論を深める必要がある。


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Hiroshi AKITAYA 平成15年11月20日